本町第3パーキングの領収書に関する奇妙な記録

霧島秀一撮影。夜の小さなコインパーキング。入口に明かりのついた精算機があり、車が止まっている。

街中の小さな駐車場の精算機は、まれに、その駐車場ができる前の日付を印刷した領収書を出すことがある。

北都県柳瀬市の本町第3パーキングは、10台ほどが止められる無人の駐車場である。入口で番号を確かめて区画に止め、出るときに精算機で番号を押して料金を払う。精算機は入庫と精算の時刻から料金を計算し、領収書を出す。

2021年6月22日、火曜日の22時ごろ、鈴木多紀子さん(仮名)はここで自分の軽自動車の傷に気づいた。後部のバンパーが横に長く擦られ、傷には白い塗料が付いている。相手の車も、連絡先を書いた紙も見当たらず、鈴木さんは110番した。警察官を待つ間に、車のそばに落ちていた領収書を拾った。

紙には本町第3パーキングの名前がある。入庫は「2009年6月18日 21時14分」、精算は「2021年6月22日 21時52分」。12年をまたいでいるのに、駐車時間は38分、料金は300円となっていた。時刻だけを比べれば、21時14分から21時52分までは38分になる。

鈴木さんは、ぶつけた車の人が落とした物かもしれないと考え、警察官に見せた。翌日には駐車場の管理会社にも連絡したが、紙だけでは利用者を特定できなかった。管理会社によると、ここが駐車場になったのは2010年春で、その前には倉庫があったという。

私は6月25日の金曜日に鈴木さんに会い、保管していた領収書と、車の傷を見せてもらった。

霧島秀一撮影。本町第3パーキングの領収書。入庫は2009年6月18日21時14分、精算は2021年6月22日21時52分と印刷されている。駐車時間は38分、料金は300円。
霧島秀一撮影。2021年6月25日、鈴木さんが保管していた領収書。入庫と精算の年が異なる一方、時刻だけを比べると38分になる。誰が受け取った紙かは分かっていない。

鈴木さんが一緒に出したのは修理の見積書だった。バンパーの交換と塗装が必要だという。鈴木さんは入庫したときのことも話した。白線の中へ車を止め、後ろに壁や柵がないことを見てから離れた。何にぶつけられたのかが分からなければ、修理代について誰と話せばよいかも決まらない。

入口の防犯カメラは2019年から壊れており、当夜の映像は残っていなかった。鈴木さんは管理会社に、近くにいた人へ車のことを聞いてほしいと頼んでいた。

無人の駐車場で車どうしがぶつかった場合、普通は当事者が警察に届け、保険会社どうしで話し合う。相手が分からなければ、自分の保険を使うか、自分で払うことになる。駐車場の設備が原因なら管理会社が補償するが、そのためには、設備のどこに原因があったかを示す必要がある。

管理会社への取材で、22日の21時台に点検会社の白いワゴンが来ていたと分かった。担当者の伊藤孝宜さん(仮名)は、精算機を調べに来たと話した。私は伊藤さんにも領収書の写真を見せたが、2009年の入庫日に心当たりはないという返答だった。伊藤さんは車の接触も見ていなかった。ワゴンの車体も見せてもらったが、新しい傷は見当たらなかった。

25日、私は管理会社に紹介された田中克宜さん(仮名)にも話を聞いた。田中さんは隣の建物の清掃員で、22日の夜、白い引き戸が軽自動車の後ろを擦るところを見たという。

田中さんがいたのは、隣の建物と駐車場との間の通路だった。21時台の終わりごろ、白い大きな戸が、鈴木さんの車の後ろを横に動いた。車の屋根より高く、板の端には縦長の取っ手が見えた。戸の下の方がバンパーに触れると、擦れる音がして軽自動車が揺れた。戸は隣の空き区画まで滑って止まり、次の瞬間には奥の塀が見えていた。

「引っ込む所がないんです。横にも、何もなかったから」

田中さんは、戸を見たとき、ワゴンは入口の精算機の脇に止まっていたと答えた。その場で駐車場の連絡先へ電話し、見たことを話したという。鈴木さんが戻る前のことだった。

管理会社の連絡先は、夜は担当者の白石俊介さん(仮名、44歳)の携帯電話に転送される。その電話には、22日の21時58分に田中さんからの着信が残っていた。田中さんが話した時刻と合っている。現地で示してもらった場所は、アスファルトと白線が続くだけで、戸を取り付けられる柱や壁はない。

6月28日、白石さんが、駐車場を造ったときの資料を見せてくれた。解体前の倉庫の写真には白い引き戸があり、端に縦長の取っ手が付いていた。隣の建物の角と奥の塀を手掛かりに比べると、倉庫の出入口は、鈴木さんが車を止めた区画の後ろに重なっていた。

同じ日、私は白石さんに、この区画で以前にも同じような傷の申し出がなかったかを尋ねた。白石さんは少し黙ってから、苦情の記録を出してきた。2014年と2018年に、同じ区画に止めた車の後部に、白い擦り傷が付いたという申し出があった。どちらも相手は分からなかった。

2018年に申し出た人には、管理会社を通して連絡がついた。市内に住む会社員の男性で、名前は出さないでほしいという条件で電話に応じてくれた。夜に止めて、戻ると後ろのバンパーに白い線が入っていた。会社から見舞金を受け取るときに、ほかに同じ例はないと言われたという。

2件とも、管理会社は利用者に見舞金として修理代の一部を払っていた。記録には「原因不明。区画の使用は継続」とある。2018年の記録の余白には、「区画を写すカメラの増設、見送り」とも書かれていた。入口のカメラは翌2019年に壊れ、それからも直されていない。

「傷の原因が駐車場の設備だと認めれば、全額を払うことになります。でも、うちの設備には何もない。原因が分からないので見舞金という形にしてきました。区画を止めると、何かあると認めたように見えるので、それも避けてきました」

白石さんは、22日の夜に田中さんから電話を受けていた。翌朝、鈴木さんから連絡が来たとき、清掃員の話は伝えなかった。戸の話をすれば、補償を断る口実にしていると思われると考えたからだという。

白石さんは田中さんにも、警察に話す必要はないと伝えていた。田中さんは、自分の見た物を誰にも信じてもらえないだろうと思い、そのまま黙っていたという。

精算機については、点検会社が調べ続けていた。2009年の入庫日が印刷された理由は、まだ説明されていない。私が25日に現地で精算したときは、入庫も精算も当日の日付だった。拾われた紙が誰の300円に対するものかも分かっていない。白石さんの資料では、倉庫の最後の荷物が運び出されたのは2009年の夏だった。日付までは記されていなかった。

私は、鈴木さんに過去の2件のことを伝えてよいかと白石さんに尋ねた。白石さんは、自分から話すと答えた。6月30日、白石さんは鈴木さんに電話で記録のことを説明し、今回は修理代の全額を会社で払うと伝えた。原因が分からないことは、前の2件と変わらない。違うのは、同じ区画で3度目だと会社が認めたことだった。

鈴木さんは、電話の後で私にこう話した。「前にも2回あったなら、最初に言ってほしかった。私が止める前に、コーンを置いておくこともできたはずです。お金のことより、そこが引っかかります」

6月末、管理会社は鈴木さんの車があった区画と、その隣を使わないことにした。2区画にはコーンが置かれ、精算機には使えない区画の番号が貼られた。田中さんが戸の通った場所として示した範囲と重なっている。

鈴木さんは、領収書と修理の見積書を一緒に保管している。補償が決まった後も、領収書は管理会社に渡さなかった。

6月30日の夜、私が駐車場の前を通ると、鈴木さんの車が入口に近い区画に止まっていた。鈴木さんは車を降りると、後ろへ回ってバンパーの先を確かめ、それからコーンの並んだ2区画の方を見てから、精算機の前を通って帰っていった。

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